ろき通信 vol.79   札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.42

国松紗智子(くにまつさちこ)の制作現場

 国松紗智子さんのことは、かわいい娘さんたちとギャラリーに遊びにきている姿をよく見かけており、「伸び伸びとした、よい空気を運んできてくれるご家族だなぁ」と憧れていました。線と向き合う彼女は、「誰でもできる表現が好き」と言います。誰でもできるからこそ、どうやって自分の線を描くのでしょうか。

生活のすべてが線につながる

Line of Sight 2020

Line of Sight 2020

 ワクワクする展示の一つに、観客の目の前で下書きもせずに絵を描き進めるライブドローイングがあります。この方法は、とくにごまかしのきかないその人そのものが出るように思います。また日々の鍛錬すべてが出ますから、視線、体、筆の動き一つひとつをじっと見つめてしまいます。

 紗智子さんの作品は、迷いのない線が印象的で、佇まいの美しい彼女そのもののようです。美しさのほか、壁に直接書かれた作品や、額装された作品からは、ライブドローイングで体感できる緊張と似たものを感じます。

 穏やかに見えて、凛とした空気を放つ線を目の前にすると、その世界に引きまれ、誰の心の中にもある静かな風景とも重なるように思えてくるのです。

 制作ペースについては、﹁日記のように作品制作ができたら﹂と話します。三姉妹の母でもあるので、作品よりも、生活のさまざまなものと向き合う時間が長いそうです。そんな中で行った昨年の個展は、﹁生活のすべてが線になることを知った﹂と話してくれました。

 結婚をはじめ、さまざまな生活の変化の中でも常にポジティブで、未来に明るい希望を持つタイプの紗智子さん。だから家族からの影響を苦に思ったりしないし、生活のすべてが線につながることを知ってからは、短時間でもより集中して制作できるようになったそうです。絵との出会いや、受けた影響についても聞いてみました。彼女の母の弟が絵を描く人で、小さな頃から画材や美術に触れる機会が多かったそうです。当時住んでいた家の壁中に好きに絵を描いて、怒られた記憶もあるそうで、彼女の伸び伸びとした雰囲気や、作風の原型は、そのときから変わっていないのだろうなと感じました。

 「自分のために線と向き合っている」と話す、はっきりとした彼女の姿勢は、とても説得力があり、久しぶりにゾクッといい鳥肌が立ちました。

 生活のすべてが彼女の描く線に乗る。昨年の個展からの彼女の変化を知りたくなりました。そして、凛とした彼女の作品をまたすぐに体感したいと思いました。
(作家写真:Ryoichi Kawajiri 作品写真:Yusuke Momma 文:菅原由香)

国松紗智子 国松紗智子(くにまつさちこ)/美術作家|
1983年、北海道札幌市出身。「Line of Sight」視線をテーマに、線のドローイングを続ける。見つめ続けた情景が線と重なる。主に個展、グループ展などで作品を発表。2004年より同一テーマで制作。

※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
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