ろき通信 vol.77   札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.40

クスミエリカ(くすみえりか)の制作現場

 以前も紹介したクスミエリカさんは、現在もデジタルコラージュの手法を用いて、より意欲的に作品を展開し、活躍しています。2020年は「第48回札幌文化奨励賞」と「第30回道銀芸術文化奨励賞」を受賞。これからの彼女の可能性への期待が込められた受賞のように感じています。

作品世界に入り込む余白を作り出す

Biotope2

「Biotope2」(2020年)

 クスミさんの作品の発表は、展覧会にとどまらず、舞台公演の宣伝美術や市内施設の情報誌などさまざまです。作品の素材は、主に自身で撮影したものを使用しますが、本郷新記念札幌彫刻美術館で開催された「わくわく☆アートスクール2020ファンタジー×リアリティ」ではウェブ上で募った写真を素材とし、参加者と共同制作するプロジェクトを行いました。

 コロナ禍での展示はとても難しいですが、この試みは素晴らしいコミュニケーションを生みました。写真提供者が展示作品を前に喜んでいる姿を見ていると、鑑賞側が作品世界に入り込む余白を作り出せたことは、彼女にとっても大きな可能性を感じられたのではないかと思います。

 写真素材の時間軸をどう考えているかを聞くと、「というより、撮ったものが持っていた時間を意識しています。たとえば、樹齢何十年の木の存在、または概念のようなもの。それぞれの存在で、一つの作品の構成を考えます」と答えてくれました。

 また、彼女の作品が慰霊碑や記念碑のような存在に見えることがあり、懺悔や祈りを感じ、ここにも作品の鑑賞側を受け入れる余白があるのでは、と伝えました。すると、「記念碑はしっくりくるけれど、それを作ろうとはしておらず、現実を重ねて多面的に見せることで、さまざまに受け取れるよう、意味を限定していない」と言います。続けて、「美術作品は、見えないものを可視化したり、考えるきっかけを作る存在。自分の作品もそうありたいですね」と笑顔で話してくれました。

 デジタル手法であることも、彼女の作品が発表しやすい理由ですが、作家である前に、「誰かの役に立ちたい」というシンプルな気持ちが、さまざまな活躍の場へとつながったのだと思います。今後、空撮や海中での撮影もしてみたいそうです。そんなことを楽しそうに話す姿に、つい筆者も同行してみたくなりました。
(写真:作家提供 文:菅原由香)

クスミエリカ クスミエリカ(くすみえりか)/フォトグラファー、ウェブデザイナー、美術作家|
https://kusumierika.com/
instagram @erikakusumiworks
北海道札幌市出身・在住。自身が体験した“現実”を記録し、時間も空間も異なる写真を幾層にも重ね合わせ、デジタル処理を施した「デジタルコラージュ」作品を制作。写真以外の素材は一切使用せず、全て自身で撮影した写真のみを用いている。誰もが目にすることが可能な現実の風景を再構成することで、非現実な世界でありながらも、現実・日常の延長線上、あるいは平行線上に存在する世界であることを表現する。
展覧会情報:「札幌アートミュージアム・アート・フェア」(〜2021年2月14日)
https://artpark.or.jp/artfair2020-21/

※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
  北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

>> ろき通信 過去の記事一覧へ
>> Sun Clover トップページへ

▲ページトップへ