小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.36
~ろき通信 vol.73~

jobin.(じょびん)の制作現場

 造形作家のjobin.さんについては、10 年ほど前にも「ろき通信」で紹介させていただきました。周りで活動を続けている作家の存在には背中を押されることが多いのですが、今回、新たな挑戦をされたjobin.さんには、さらに勇気をもらうことができました。

特別な時間と空間を演出する

jobin.「みずいらず」
時間制貸切個展「みずいらず」2019

 jobin.さんはこれまで、さまざまな会場でモビール作品を中心とした構成の展示を行ってきました。場所や空間を作品として体験させる、インスタレーションの手法を用いた展示です。

 2019年9月に行った個展「みずいらず」では、完全予約制の1組30分貸し切りの有料展示を行いました。インスタレーション作品は、平面作品とは違い、そのものを丸ごと作品として購入することがほぼ不可能です。しかし今回の展示は、その空間にいる時間を買ってもらい、限られた人に楽しんでもらう試みでした。

 これは、作家の展示としては聞き慣れない仕組み。告知の段階では、内容と場所はほぼ明かされなかったので、いろいろな意味でインパクトを受けた方も多いと思います。

 美術展示の多くは、美術館や百貨店で行われる有料観覧の展示か、ギャラリーで行われる無料観覧の2種類が一般的です。しかし、これに捕らわれない別の仕組みが増えても良いのではと、筆者はつねづね思っていました。

 そのため、こういったアプローチがまだあるのだと、目が覚める思いでした。タイトルの「みずいらず」からも読み取れるように、作品と体験する側がみずいらずの空間で、作品のある時間を贅沢に、自由に楽しむことができたわけです。

jobin.(じょびん)/造形作家  ロフト式の空間で構成された会場は、のびのびとした海洋生物をモチーフにしたモビール作品が点在し、見る側を演者とした舞台美術のようにも見えました。この仕組みの展示を構成するには、多くの人の協力と準備が必要だったことが容易に想像できる、素晴らしい展示でした。

 この個展が特殊だった理由の一つに、「みずいらず企画制作チームテント」という名での運営だったことがあります。通常なら、例えば美術館を会場とする巡回展だと、運営は実行委員会といった具合。ですから、個人の展示ではあまり聞かない運営方法です。作品空間を純粋に楽しんでもらう時間を優先に考えた仕組みに挑戦したjobin.さんとチームテントの皆さんに、大変感激しました。

 今後も通常の展示方法とこの仕組みの展示を展開していくそうなので、たくさんの方にぜひ体験していただきたいです。

※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

jobin.(じょびん)/ 造形作家

https://jobin55.tumblr.com/
モビール、照明、イラスト、言葉などを用い空気を生み出し、わずかな風、光、影などを織り交ぜて、浮遊感がある空間を表現する。展示する行為を旅とも捉えており、旅先として[ あるかもしれない景色] をつくり、旅を続けている。最近では、旭川デザインウィーク関連企画展示、モエレ沼公園ガラスのピラミッドでの個展のほか、札幌芸術の森美術館、札幌彫刻美術館、アルテピアッツァ美唄、六花亭福住店、札幌市内ギャラリーの他、北海道外でも活動の場を広げている。
RSR、OTOTOTABI などの音楽ライブ、イベントにて装飾を行い、雑貨のイラスト、カードなどのデザインも行い活動は多岐にわたる。

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