小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.35
~ろき通信 vol.72~

久野 志乃 (ひさのしの)の制作現場

 以前本誌でも紹介した油彩画作家の久野志乃さんですが、それから時間が経ち、彼女の環境も随分と変わりました。先日、東京で二人展を終えたばかりのところを展覧会後の心境も含めて取材させていただきました。

最初に感じた驚きを表現する

久野 志乃「光エコー」
「光エコー」 60×50cm oval oil on canvas 2018

 二人展については、もう一人の作家の樫見さんと、5年前から話していたという久野さん。昨年、東京のアートフェアに出品した際、ギャラリーの方の紹介で場所が決まり、本格的に動き出しました。テーマについては、5年前に台湾で行われたグループ展のころから決まっていました。

 ある日、台湾の街を歩いていると、ビルの隙間から鳥の声が聴こえてきました。ギャラリーの人に何の鳥か尋ねても、姿も見たことがないし、名前も分からない。それでも、この鳴き声を聴くと現地の人は「ナイトバード」と呼んでいたとか。この話を聞いて、2人は同時にこの体験がテーマになると直感したそうです。

 この「ナイトバード」をテーマに、1年前から制作が始まりました。久野さんの話を聞いていると、イメージの擦り合わせというより、最初に感じた驚きの確認作業が重要だったのだと感じました。台湾のあの夜を探るように、札幌の夜の公園に懐中電灯を持って2人で出かけたと聞いて、さらにそう思いました。

久野 志乃/ペインター  鳥の形は一つも出てこないのに、「ナイトバード」という問いかけを作品にした展覧会は大変好評だったそうです。久野さんはお子さんが動き回るようになってから制作時間を確保するのが難しく、今回の展示の準備は大変苦労したそうです。「もっとできると思っていた」と苦笑いしていました。自分の時間を作るのが難しい中、家族と友人の協力でなんとか乗り切る。作家でなくとも、自分のことのように感じる方も多いのではないでしょうか。残念ながら、筆者はこの展示を観に行けなかったのですが、お話だけでもとてもワクワクするものでした。

 久野さんは長年活動してきましたが、制作する際の自分の手癖でもある、〝色を乗せ過ぎてしまう〟ことを課題にしたいと話していました。「色を乗せていくのが楽しくなって、結果、色数が多くなってしまう。色数を少なくして面積の広い絵を描きたい」と言います。「すぐにできないかもしれないけど」と付け加えていましたが、もしかすると今年の11月に予定している展示で、新しい試みの作品を見られるかもしれません。今から展示が待ち遠しいです。

※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

久野 志乃/ペインター

http://shinohisano.com
札幌市在住。2003年北海道教育大学大学院(西洋画)修了。他者の個人的な記憶をモチーフとしながら、多重の視点から生成された新しい物語や、ありえたかもしれない風景を油彩画で表現する。札幌を中心に、東京、台湾などで個展、グループ展を開催。

(solo)2017年「海辺の風光誌」ギャラリーカメリア、2015年「発光する島」ギャラリー門馬、2015年「北の、小さな、光 North small light」金魚空間、(group)2019年「night bird」ギャラリーカメリア、2017年 「Conversing with nature」FRISE KÜNSTLE-RHAUS HAMBURG。

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