小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.21
~ろき通信 vol.59~

クスミ エリカ(くすみえりか)の制作現場

 フリーランスの写真家としても活躍するクスミさんは、撮影した素材をもとに、デジタルコラージュの手法で独特な世界観を展開しています。実家が本屋さんだった彼女にとって、本は身近な存在だったそう。そんな彼女が作る世界や、現在の環境について聞いてみました。

背中を押してもらえる、強くしなやかな作品

 小さいころは客室乗務員になりたかったというクスミさん。本を読むことも、絵を書くことも好きでした。空想や妄想をしては絵を描いて、アニメの世界やゲームの世界にも引き込まれていました。

 彼女はいつもカメラを持ち歩いていますが、写真と出会ったきっかけを聞いたことがありませんでした。大学の学校祭で迷い込んだのが、写真部の展示。「カッコイイ!」と衝撃を受け、写真部に入部したことからすべてが始まります。そもそも、ファンタジーの世界に入り込むのが好きだった彼女は、特にスタジオジブリの作品『天空の城ラピュタ』に大きな影響を受けています。彼女が写真と出会って、デジタルコラージュの世界に進むのも、自然な流れだったのかもしれません。

 もう一つの大きな影響は、カメラがフィルムからデジタルへ移行する時期を体感し、技術的な面で大きな変化が起きたからです。その後、2008年にコラージュ作品を初めて発表。その前までは、写真を切り貼りするアナログな方法で制作していました。「不器用だから大変だった」と、笑って話します。

 仲間にも恵まれました。女性写真家集団『HAKONIWA』に所属し、グループ展を多く経験しました。この積極的な活動は、彼女のフットワークの軽さや柔軟性を育てたように思います。

 2011年に頭の中に描いたものを自分で納得のいくところまで作品で表現できた経験から、さらに熱心に制作を続けてきました。作品の一番のテーマでもある〝生と死の表裏一体の世界〟を表現し続けることは、彼女が乗り越えなければならない現実と対峙するための大切なプロセスでもあったように感じます。彼女は制作することで自分と向き合い、作品の世界と同様の絶妙なバランスを保っているのです。

 「なぜ制作をするのか」と聞くと、「自分のバランスを保つために不可欠だから」と答える作家が多いです。この人間らしい理由に惹かれるのは、そんな作家の姿に背中を押してもらえるからではないでしょうか。

 2016年1月17日から始まった札幌美術展(札幌芸術の森美術館〜3月27日)では、彼女の作品も出品されています。北海道の厳しい冬の中、彼女の強くしなやかな作品が、誰かの背中を押すことになると思うのは筆者だけではないはずです。


タイトル:白の虚像 常世の樹海
制作年:2012年




写真・撮影:クスミ エリカ
    文:菅原由香 
※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

クスミ エリカ/フォトグラファー

1982年生まれ。札幌出身。
フリーランスのフォトグラファーとして仕事をする傍ら「現実の風景の撮影ではどうしても表現できないこと、物理的・ 空間的に不可能なことを表現したい」と思い立ち、自身が実際に体感し撮影した写真のみを用い、デジタル処理を施すコラージュ作品の制作を開始。
WEB : kusumierika.com/

札幌美術展「モーション/エモーション ―活性の都市―」
札幌芸術の森美術館(~3月27日)
WEB : http://sapporo-art-museum.jp/

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