小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.20
~ろき通信 vol.58~

松浦 進(まつうら すすむ)の制作現場

 松浦さんは、高校で美術教師をしながら制作しています。作品は主に、シルクスクリーンという、製版し印刷する技法を用いるもの。大学在学中から個展やグループ展で意欲的に作品を発表してきました。筆者が彼の作品を初めて見たのは3年前だったと思います。重めの色で構成され、コントラストの強い作品が印象深かったことを覚えています。

変わった面白さを楽しむ、シニカルな作風

 大学に入ってから美術を学び、周りにいた先輩の影響から版画のゼミに顔を出したときに、「刷ってみる?」と誘われたことがきっかけで作品を作るようになります。学校のアトリエには、今でも多くの先輩が出入りしているので、自分のことを寂しがり屋と話す彼にとっては、情報交換もできる居心地の良い場所であり、大切な拠点であることが話の端々に出てきます。長い経年を感じさせる質感とシニカルな作風は、子どものころ、クリスチャンである両親の礼拝中に絵を描くことが多かったと話す彼の人間性がよく表れているように感じました。

 たとえば、気持ちの悪いおじさんの絵を描いて母親に見せ、「気持ち悪い」と言われることを楽しんでいたそう。当時から少し変わった面白さを楽しむ子どもだったようです。作品に出てくる人物像は、このユーモアの影響が色濃く出ています。

 他に、参考にしているものや影響を受けたものを聞くと、〝お金持ちへの憧れ〟や〝貴族っぽいもの〟といったキーワードが出てきます。具体的な作家名や作品名は特になく、執着もないようで、すっかり松浦さんの感覚に飲まれてしまいました。というよりも、はぐらかされてしまったのかもしれませんが、海外のギャラリーに作品を持ちこむバックパックの旅をした行動力や、公募展への積極的な姿勢から、期待せずにはいられない一面もありました。一見、飄々として見えますが、作品に対しての情熱や好奇心が強く、加えて作品に対する愛情もあり、バランス良く活躍の場を広げていってほしいと思う作家に出会えた、心躍る取材になりました。

 彼の活躍の背景として、今、札幌の作家がどのような環境にいるかを少し話したいと思います。作品の発表を続けている作家のほとんどが、作家以外にも仕事を持ちながら制作しています。作家としての仕事のみで活躍している方はほんの一握り。それほど難しい環境であるわけですが、それでも作品を発表し続けている方々の世界があるのを知っていただきたいと、勝手ながら思うわけです。料理の世界、広告の世界など、それぞれの町に多種多様な世界が存在します。それにより町の特色や存在感ができているわけで、それらをもっと知りたいと筆者は常々思っています。また、多くの世界で若手不足が起きていると聞きますし、札幌の作家の世界も同様です。

 この背景から、若手作家の松浦さんがどのような考えで制作されているかを聞けたのは、筆者にとって心強く感じられる内容でした。


タイトル:artificial propagation city
制作年:2015年




写真・撮影:Komuro Haruo
    文:菅原由香 
※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

松浦 進(まつうら すすむ)/版画作家

1989年旭川市出身。札幌を拠点として制作
【個展】
2015 松浦進展「conscientia」(TO_OV cafe/札幌)
2014 松浦進展「one person」(gallery犬養/札幌)
2013 松浦進展「persona」(RED AND BLUE GALLERY/東京)
松浦進展「cryptic」(黒い森美術館/北広島)
松浦進展「profiling」(gallery創/札幌)
【その他】
2015 トーキョーワンダーウォール2015(東京都現代美術館/東京)
第70回 全道美術協会展(八木賞)
JR TOWER ART BOX AWARD 2015(優秀賞)
WEB : http://susumumatsuura.tumblr.com

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