小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.19
~ろき通信 vol.57~

石倉美萌菜(いしくらみもな)の制作現場

 石倉さんの作品を前にすると、「なんて真っすぐに生きているのだろう」と思います。それは人として望ましい姿ですし、彼女の純粋さに自分の影を重ねたくなります。彼女の作品をなぞることで、自分はどうだったのか、今はどう生きているのかと問いかける時間にもなります。しかし、彼女の作品は、どこか滑稽な面と、恐ろしくも美しい面があり、これらも純粋さからはじき出される巧みな技術なのかもしれません。

バイタリティーに溢れ、日々変化していく

 作品を作ることを意識したのは、幼稚園のころ、絵描きになりたいと思ったときでした。しかし、それは最初だけ。落語家や農家になりたいと思ってみたり、高校生のときには、お笑いライターになりたいなど、多種多様。これとは決まっていませんでした。高校生のとき、先生に「表現者になれ」と背中を押され、美術家になることを意識するようになります。
 「本当は先生に乗せられたのだと思います」と話しますが、その先生は、彼女の才能を感じ取っていたのではないでしょうか。いくつか受けた美大に合格できず、2年浪人して地元の美術短大に入学します。しかし予備校時代にいろいろなことを刷り込まれてしまい、地元の美大に偏見を持ったまま、捻くれた学生生活を過ごしたそうです。この辺のことも包み隠さず話すので、逆にとても爽やかな印象を持ちました。
 この流れだと鬱々としたまま終わりそうですが、現代美術の展示を見に行ったときに知ったCAIアートスクール(札幌市)にも同時に入学するというパワフルな学生生活を送ったのです。  彼女はすでにバイタリティーに溢れ、力強いというのに、自分のその力に気付いておらず、何故か遠回りをする癖があるように感じました。高校の先生が、そんな彼女に「表現者になれ」と声をかけた気持ちが何となくわかるような気がします。
 そして、展示をするようになった今も、彼女は息が出来なくなるほど煮詰まって、「一生続けられるわけがない」と思いながらも、作品と向き合っています。
 プライベートな話ですが、彼女には最近、彼氏が出来ました。自分の作品に向けるパワーは、満たされないフラストレーションから生まれることが多かったので、毎日が楽しく、充実することで、作品にどんな影響が出てくるのか、心配しながらも楽しみにしています。
 先日見た彼女の作品には、その楽しい日々の姿があらわれ始めていたようです。パワフルに変化する彼女の作品が、また楽しみになりました。客観的に自分を見ているからなのか、自分のことをまるで他人ごとのように話すので、笑ってしまいます。つくづく自分を実験台のように楽しむ人だと思いました。彼女の飾らない自然体な人柄に甘えてしまって、話が色々と脱線してしまいましたが、胸に秘められた決意と近況を聞かせてもらい、とてもワクワクする取材になりました。


タイトル:話しかける理由話かけられる理由無視する理由
制作年:2014年

石倉美萌菜(いしくらみもな)/美術家

1986年北海道生まれ、北海道在住。
2009年大谷短期大学美術科油彩コース卒業、在学中に CAI現代芸術研究所夜間コース卒業。
自己を取り巻く世界との間に生じる違和感等を自身の日常や個人的な感情・葛藤と引き合わせ絵画や立体、パフォーマンスなどさまざまな手法を試み、表現している。
2014年アートステージ 2014「ART STREET」、2012年個展「さぁ この先どうしよっか」、2010 年S-AIRアワード受賞(上海で2カ月のレジデンス)など。

>> ろき通信 過去の記事一覧へ

>> Sun Clover トップページへ

▲ページトップへ