小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.16
~ろき通信 vol.54~

阿部寛文(あべひろふみ)の制作現場

 今回紹介する阿部さんは、数年前から気になっていたグラフィックデザイナー。これまでも、展示や関わった企画にお邪魔させていただいていました。どこでも同じ佇まいで自分の存在感を匂わせる彼の作風には、どっしりとしたものがあり、その理由を少しでも聞き出すことができればと思い、取材を依頼しました。

ずっと面白いことをしていきたい!

 実家暮らしのため、家族が寝静まった深夜に作品を制作することがほとんどだという阿部さん。デザイン事務所に勤務していたときも、職場に泊まることが多かったそう。どんな段階を経て作品づくりをしているのか興味がわいてきます。
 深夜、静かに制作するスタイルに馴染んでいる彼が、デザインについての仕事を知ったのは大学時代です。小さなころから絵を描くのが好きでしたが、中学・高校でサッカーに夢中だったときは、自分の将来や興味について誰かと深く共有することはなかったとのことです。現在、彼の仲間や尊敬する方々の一部を知っている身としては、それは少し信じがたいとも思いました。  では、デザインにのめり込む時期を経験したのか聞いてみると、大学2、3年のころから変わったことをはっきり覚えていると話します。それまではサッカー部にいるような普通の大学生で、私が彼を知ったのもそのころです。とても落ち着いていたので、7つと5つ年が離れた兄がいる3人兄弟の末っ子だと聞いて驚きました。長男からは音楽、次男からはサッカーの影響を受けており、周囲が年上ばかりの環境だったために、早熟な部分もあったのかもしれません。
 今年の7月に行われた木と紙の作品展『そして、夜がくる。』でも、その落ち着いた作風が、木工作家の辻有希さんと、会場となったContext 21.8のオーナー石神照美さんとの調和により見事に表れており、本当に素晴らしい空間でした。
 彼の作品や、他のイベントや個展など多岐にわたる展開を見ていると、私はつい葛西薫氏の面影を見ます。葛西氏はデザイナーでもあり、ディレクターでもありと多才な活動をされている、私の大好きな作り手の一人。作風が似ているわけではなく、グラフィックデザイナーという肩書きを超えた仕事の姿勢がそう思わせるのかもしれません。
 大学卒業後にデザイン事務所を経てフリーランスで活動している今を、「とても恵まれている」と話す阿部さん。取材中に何度もこの言葉が出てきました。しかし、彼自身がその環境を活かしてきたからこそ、今があるのだと思います。
「突き抜けていきたい。〝面白いね!〟と言われたいです。……いや、自分自身がずっと面白いことをしていきたいです」計画するのが苦手ながらも、ぶれずに続けてきた姿勢が、その言葉から見えた気がしました。面白い形を追い続ける彼のその展示をまたぜひ観たいと思っています。

阿部寛文/ グラフィックデザイナー

1989年生まれ。札幌市立大卒業後、デザイン事務所を経てフリーランサーとして札幌を拠点に活動中。国内外のアーティストやイベントのデザインを多く手がけその他様々な分野でデザインワークを展開。また展覧会などを通し形の発見、再構成による作品制作を行っている。
ホームページ●http://www.abehirofumi.com

>> ろき通信 過去の記事一覧へ

>> Sun Clover トップページへ

▲ページトップへ