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札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.39

JAZZ喫茶の神髄

『LAST RECORDING』
HANK JONES - THE GREAT JAZZ TRIO

 4年前に訪問した岩手県一関にあるジャズ喫茶「ベイシー」がドキュメンタリー映画『ジャズ喫茶ベイシーSwiftyの譚詩』になった。ベイシーを訪れたとき、まさか、マスターの菅原正二自ら注文を聞きに来るとは思わず、緊張してコーヒーを頼んだ気がする。マスターは自らコーヒーを選び、レコードを掛けている。書籍「ジャズ喫茶ベイシー読本」の中に書いてあるように、お客の好みを嗅ぎ取って次に掛けるレコードを選んでいるのだろう。

 店内に入ると、正面にJBLのダブルウーハーが目に止まる。その音はジャズプレイヤーがそこで演奏しているような感覚に陥る。ベイシーのオーディオは、プレーヤーがリンソンデックLP12以外はアンプもJBLで、音が変わったら困るので電源は切ったことがないそうだ。開店以来使用しているオーディオは変わっていないような気がするが、実はJBLのパワーアンプは同じ物を合計12台買い、その中から篩いにかけて今の4台が使用されているとか、カートリッジ(シュアーV15Ⅲ)の針は年間200本も買ったことがあるとか、日々いい音を出そうと悪戦苦闘し今の形になって全国から、いや世界から“いい音”を聴きに集まるのだろう。そうでなければ米国のJBLの社長やエンジニアが、わざわざ2度もベイシーに来ないだろう。

 この映画の監督は、菅原正二氏の熱烈なファンの星野哲也氏で、初監督作品である。彼は「今年開店50周年になるベイシーも菅原マスターも永遠でない。何とか記録として残したい」と、その強い想いで5年間、菅原氏を追い続けてベイシーでのレコード演奏を名機ナグラで録音し、映画を完成させた。この映画の公式サウンドトラックCD「プレイバック・アット・ジャズ喫茶BASIE」も良いが、この音はぜひ、映画館で堪能することにして、この中で紹介されているグレイトジャズトリオこと、ハンク・ジョーンズの「ラストレコーディング」を聴いてもらいたい。プロデューサーは、菅原マスターの早稲田大学の1年後輩の伊藤八十八氏でSACDの立ち上げにも深く関わり、演奏・録音・ジャケットに拘った作品をリリースしている88(Eighty-Eight’s)レーベルだ。

 「チュニジアの夜」は言わずと知れたディジー・ガレスビーの曲で、ロイ・ハーグローブの「キレッキレッ」の演奏だ。「カンタロープ・アイランド」はハービー・ハンコックの作品をレイモンド・マクモーリンのテナーサックスとリー・ピアソンのドラムスが一層ファンキーに熱く加速している。バド・パウウェルの「クレオパトラの夢」は、どちらかといえば手垢がついた曲に思われ敬遠されがちだが、ハンク・ジョーンズのピアノは91歳とは思えない矍鑠(かくしゃく)とした見事な演奏になっている。今宵は、美味しいつまみと、ひやおろしでも呑みながらじっくり聴いてください。

Mr. Vee Jay より

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