ひととせコラム【41】   札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.41

蜜蜂とハチミツ

 この春は桜が咲き行楽シーズンがきても、世の中の話題は新型コロナウイルスやワクチン接種などばかりであった。気分がスッキリしない人が多いことだろう。そこで今回のコラムでは、これまで取り上げてこなかった興味ある話題を提供したい。

 春がくれば、蝶や蜂が花の間を軽やかに飛び回る。蜂、とりわけ蜜蜂の働きは健気である。蜜蜂と人間とのかかわりは長く、植物の成長にも欠かせない。蜂は、日本書紀にも出ているくらいだから、古くから日本にもいた。「ニホンミツバチ」である。江戸時代には、小林一茶が、「一ひとはたけ畠まんまと蜂に住まれけり」とか「へぼ蜂が孔くじゃ雀く気どりや花御堂」などとうたっている。明治時代以降からは、「セイヨウミツバチ」が普及している。

 子供たちがうたう童謡に「ぶんぶんぶん」がある。ボヘミア民謡を村野四郎が訳したものである。「ぶんぶんぶん はちがとぶ おいけのまわりに のばらがさいたよ ぶんぶんぶん はちがとぶ」と、蜜蜂の役割をキチンとうたっている。蜂は花から花へと飛び回り、花の受粉を助けている。ホフマンの原詩では、キリストや蜜に対する感謝もうたっている。古代エジプトでは、蜜蜂は王位の象徴であり、キリスト教では慈悲の象徴とされていたという。

 蜜蜂は、蓄えてきたエネルギーを少しずつ使い、厳しい冬を過ごす。そして春がくると、花から花へと活発に飛び回り、蜜を作る。女王蜂は2年くらい生きるが、働き蜂の寿命はわずか1カ月である。働き蜂には、「内勤」と「外勤」がある。内勤では、蜜づくり、巣づくり、掃除などをする。外勤は、花粉集めである。1匹の蜜蜂が集める蜜は、スプーン1杯。それを人間がもらってしまうわけである。イチゴやメロン栽培では、ハウス栽培が多いが、これにも蜂たちの働きが必須である。

 一般に、蜜蜂には花の咲く畑、樹木、野原が必要である。しかし、開発とともに、このような土地が減ってきている。北海道には広い畑や森があり、高原のある長野県に次いで、全国2番目のハチミツ生産地である。花の種類も豊富なので、北海道の各地には、アカシア、レンゲ、百花など名産ハチミツが多い。晩春が過ぎて夏になると、本州の平地では花がなくなり、北海道の畑や山野が頼りとなる。蜜蜂は、冬の間は暖かい九州や本州に移動して飼われる。春になり花が咲くと、また活躍を始める。花の北上とともに、蜜蜂の飼育も北に移動する。養蜂業は勝手にはできず、各道府県から許可を得なければならない。

イラストレーション:山本重也
http://www.shige-web.com/

 蜜蜂は昔から世界中で研究が進んでおり、蜜蜂の「8の字ダンス」を研究して、ノーベル賞を受賞した学者もいる。学習能力が高く、太陽の位置、巣からの距離、花の種類や香りを認識している。だから都会のビルの屋上でも、蜜蜂を飼うことは不可能ではない。しかし、その量たるや、わずかなものである。日本で消費されるハチミツのうち、国産の割合は6~7%しかない。ほとんどが中国や欧米からの輸入である。外国頼みは、マスクやワクチンだけではなかったのである。

 今の日本は、都市化が進み山野は減っている。蜜蜂たちにとって、住みやすい環境ではなくなった。毎朝、トーストにハチミツ、ジャム、北海道バターを塗るたびに、蜜蜂たちの働きに感謝するこの頃である。

大森清司(おおもり・きよし)|1937年8月千葉県野田市生まれ。1960年中央大学法学部卒業。1960年野田醤油株式会社(現キッコーマン)入社。営業企画部長、デルモンテ事業部長などを経て、1994年取締役就任。2002年代表取締役専務として全国の営業を統括。2010年退職。この間、日本マーケティング協会マスターコースマイスター、全国トマト加工品業公正取引協議会委員長、学校法人中央大学理事などを歴任。著書に『私のビジネス春秋』『春秋余情』『春秋高く、しなやかに』『ひととせを紡いで』(諏訪書房)。趣味は読書、詩吟。

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