小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.33
~ひととせコラム【33】~

水は四季を巡る

 2019年5月1日から日本の国のかたちがかわる。天皇が生前退位され、元号がかわる。天皇と上皇がおられるのは約200年ぶりである。南北朝時代には、同じ日本に元号が2つあった。いまは平穏に「改元」が行われて、何よりである。ご承知のとおり、新天皇のライフワークは「水」である。もともと学習院大やオックスフォード大で「水上交通」を研究されておられた。その後、テーマを人類と水の関係全般に広げられ、国連の「水と衛生の諮問委員会」の名誉総裁も務めておられる。陛下は皇太子の時代に、我がまちにある千葉県立関宿城博物館を訪問されたことがある。ここは全国でも珍しい「川の博物館」で、治水、河川交通や河川の歴史を今に伝えている。江戸川や利根川は、江戸時代から洪水対策や利水のために川の流れが変えられてきたことで知られている。
 あたらしい時代の幕開けに当たり、改めて「水」に思いを巡らせてみたい。地球は唯一「水の惑星」と言われてきた。塩分などが少ない水がなければ、生物も人間も生きられない。水こそは生命の源である。地球上の水の約9割は海水として存在している。海水は蒸発して水蒸気になり、それが上空に昇って雲となる。雲は雨や雪となり、陸地の野山に降ってくる。そしてこの水は湖や池や川になり、また海に流れる。霧や靄も小さな水の粒子である。こうした水の循環こそ、地上に住む我々に多くの恵みをもたらしてくれる。人々の喉の渇きをいやし、森や林を潤し、作物を育てる。この水の循環は季節や国によって大きく変わる。乾燥したヨーロッパなどでは水稲は育たず、麦などしか栽培できない。これに対して日本は適度な水に恵まれ、水田や豊かな生態系がある。そして、近海は、世界でも数少ない豊かな漁場となっている。


イラストレーション:山本重也
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 かつての日本の新年は、井戸から「若水」を汲み、神棚にそなえることから始まった。奈良東大寺のお水取りは有名である。日本に明瞭な四季があるのは、地球の公転と水のおかげである。冬の間、日本海には対馬海流(暖流)が流れ、水蒸気が発生する。この水蒸気が大陸の高気圧に冷やされ、雪となる。こうして列島の日本海側では毎日のように雪が降り、太平洋側では乾燥した晴天が続く。雪解けの水で乾燥地も潤う。やがて春が来れば、春雨が降り、木々は芽吹く。梅や桜の花が咲き、新緑が深まる。やがて本州以西では、梅雨が来る。田植えの時期を迎え、穀雨の季節と言われる。じりじりとした夏の間にも夕立は来る。やがて実りの秋を迎え、秋風が吹き秋霖の季節となる。秋の長雨である。やがて季節は冬を迎える。こうして、水は季節とともに、雨、霧、霜、雪、氷とその姿を変える。

 日本は、水が美味しい国である。世界で水道の水が飲める国は、日本をはじめ13国くらいしかない。環境庁では、中でも良質な水、保全がよい湧水などを「名水100選」として選んでおり、北海道にも3カ所ある。アジアモンスーン地帯にある日本は、「カビの文化」が生まれ、日本酒や醤油、味噌などがつくられる。水には軟水と硬水があるが、軟水はカルシウムなどが少なく、まろやかで日本料理などに向いている。日本の降水量は、世界平均の約2倍もある。しかし、日本の山々は急峻で、川の水はすぐに海に流れ込む。人口1人当たりでは、水は決して多くはない。水は大切に使わないといけない。時には夏に全く雨が降らず、日照りをもたらすことがある一方で、大雨が災害をもたらすこともある。日本では毎年のように水による災害がある。水を完全にコントロールできたなどと考えるのは、不遜というものである。私たちは水の恵みに感謝するとともに、水への畏敬を持ち、水への備えもしたい。

大森清司(おおもりきよし)

1937年8月千葉県野田市生まれ。1960年中央大学法学部卒業。1960年野田醤油株式会社(現キッコーマン)入社。営業企画部長、デルモンテ事業部長などを経て、1994年取締役就任。2002年代表取締役専務として全国の営業を統括。2010年退職。この間、日本マーケティング協会マスターコースマイスター、全国トマト加工品業公正取引協議会委員長、学校法人中央大学理事などを歴任。著書に『私のビジネス春秋』『春秋余情 私のほどほど人生』『春秋高く、しなやかに シルバー・ボーイズ、ビー・アンビシャス!』(諏訪書房)。趣味は読書、詩吟。

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