小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.32
~ひととせコラム【32】~

木枯らしに舞う落葉

 平成30年9月6日未明に発生した、北海道胆振地方を震源とする地震で被災された皆様にお見舞いを申し上げます。北海道最大の火力発電所、苫東厚真発電所でも被害があり、これが原因となって北海道全域で一斉停電(ブラックアウト)も起きた。その後2カ月にわたって多くの余震もあった。千歳にセカンドハウスを持つ友人は、10月のはじめになって千葉の自宅に戻ってきた。火力発電所の復旧は予想以上に長引き、電力不足が長期化した。この結果、全道の産業、観光などへの影響は大きかった。節電の影響で、札幌のネオンの灯り、函館の夜景、イカ漁のいさり火なども消えたと聞く。アイヌ関連の文化遺産も壊れた。恒例の「さっぽろオータムフェスト」の開催は1週間遅れた。幸いに、むかわ町の穂別博物館にある恐竜ハドロサウルスの化石は無事だったという。北海道の冬の訪れは早い。例年日本の山岳地帯で冠雪が最も早いのは、北海道最高峰の大雪山系旭岳である。今年も9月20日に初冠雪があった。しかし長期予報が外れて、札幌などの初雪は例年よりかなり遅かった。最近では、牛乳生産なども復調してきている。この季刊誌が届くころは、震災地の皆さんが穏やかに過ごせているように願っている。


イラストレーション:山本重也
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 富士山も今年は平年より4日早く、9月26日に初冠雪を見た。日本の北方上空にある寒気団が急に流れこみ、列島をすっぽり包み込んだせいである。関東地方は今のところ平穏である。冬の到来をいち早く知らせる現象に、「木枯らし1号」がある。晩秋から初冬にかけて吹く、北西の強い風である。気象庁では、東京と近畿に10月半ばから11月にかけて初めて吹く、毎秒8メートル以上の北よりの風を「木枯らし」と呼んでいる。古くは、秋の初風は木枯らしと呼ばれていたが、次第に晩秋から初冬の風をいうようになった。俳句でも木枯らしは冬の季語となっている。たとえば、小林一茶に「凩や木の葉にくるむ塩肴」という句がある。立冬の季節を過ぎれば、黄葉の終わった林には、木枯らしが梢を鳴らしていく。木々の落葉もしきりとなる。この季節、雑木林の散歩道に散った落葉がカサコソと鳴る。近くの杜には、スギやヒノキに交じってナラ、クヌギ、ヤマザクラなどがある。ヴェルレーヌの詩に「秋の日の ヸオロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し」がある。フランス語の原題は「秋の歌」であるが、上田敏は『海潮音』のなかで「落葉」という題名に訳した。落葉は秋ではなく冬の季語である。この詩は落葉をうたっているので、上田は日仏の季節感の違いを考慮したのではないかと想像している。

 木枯らしが吹けば、以前は「落葉たき」があった。童謡「たき火」にも「こがらし こがらし さむいみち たきびだ たきびだ おちばたき あたろうよ あたろうよ そうだんしながら あるいてる」という歌である。かつて郊外や農村部では、この季節になると落ち葉を燃やし、子供も大人も集まって温まったものである。その昔、越後の五合庵に住んだ良寛さんは、「焚くほどは 風が持てくる 落葉かな」という句を詠んだ。今は、落葉は厄介ものとされるが、当時は貴重な燃料だった。昔から、冬は寒く、夏は暑いのがよいとされてきた。たとえば、『枕草子』にも「冬は、いみじうさむき、夏は、世にしらずあつき」とある。今年の夏は、世に知られないように暑かった。しかし、冬があまりに早く来たり、極端な寒さは困る。寒さに備えての準備が、いろいろと必要になる。現代の私たちは、昔の良寛さんみたいに、落葉を燃料として焚くわけにはいかない。もう薪や炭は必要ないが、ストーブ、ヒーター、エアコンなどの点検、灯油・ガス、スコップ、さらには懐中電灯など災害時の備蓄品の買い置きが望まれる。

大森清司(おおもりきよし)

1937年8月千葉県野田市生まれ。1960年中央大学法学部卒業。1960年野田醤油株式会社(現キッコーマン)入社。営業企画部長、デルモンテ事業部長などを経て、1994年取締役就任。2002年代表取締役専務として全国の営業を統括。2010年退職。この間、日本マーケティング協会マスターコースマイスター、全国トマト加工品業公正取引協議会委員長、学校法人中央大学理事などを歴任。著書に『私のビジネス春秋』『春秋余情 私のほどほど人生』『春秋高く、しなやかに シルバー・ボーイズ、ビー・アンビシャス!』(諏訪書房)。趣味は読書、詩吟。

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