サンクローバーvol.49
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花を飾るような  気楽さを絵にも学生の頃はいつも無計画で、自分が気に入るまで、気分が乗るまで描き続けていたというmaniさん。先日の個展では、描き方を変えてみたと語ります。ちょっとした空き時間や寝る前の30分で3、4枚の絵をちょこちょこと描き進める。その描き方に慣れてきて、実際に個展ではその方法が合っていたそう。「どこで描くのをやめるか、今でも描き込むバランスを考える」と言います。個展で感じた軽やかさは、この描き方の変化が、展示全体にも出ていたからのようでした。普段は絵と向き合う機会がない人にも「これ、好き」という作品が一つでもあるといいなと考えたり、見る側を緊張させたくないから「展示だから静かにしなさい」みたいな雰囲気にはしたくないなと気にかけていたのだとか。そんなmaniさんの気持ちが、会場全体の構成にもよい影響を与えていたように思います。個展期間中に子供が絵を描き始めてくれたことがあって、それがとてもうれしかったと話す彼女の言葉から、個展は大成功だったのだと改めて感じることができました。 「ちょっと花を摘んできて飾るときのような気楽さを、絵に対しても持ってもらえたら」と話すmaniさんの制作からは、彼女の日常が続いているように思えました。仕事と子育て、そして制作に向き合う彼女に理想の制作環境についても聞いてみました。 「家で畑をつくりながら、起きては描いてを繰り返したい。畑や自然はすごく面白くて、喜びを感じることが多いのだけれど、絵だけの制作はきっと行き詰まると思うから」と話します。自宅では家庭菜園を楽しんでいるmaniさん。すでに理想にかなり近い状態なのがすごい! 中で、彼女の口からたびたび「無計画」という言葉が出てきたのが、どうしても信じられません(笑)。今後の活動も気になっています。話している途 マ ニmaniの制作現場 Reportろき通信Art 右:「無題」2022年左:「日常蜃気楼」2022年写真:作家提供  文:菅原由香 ※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。プロフィールmani(マニ) 絵描き 1981年生まれ、札幌在住。鳥、動物、植物などのイラストを主に描いている。その他、デザイン、イベント会場の装飾、ワークショップなど。http://madobe.click個展 mani ten(2007年)/個展 small aquarium(2008年)/装飾 KEB DAE JAPAN TOUR 2011 in sapporo(2011年)/2人展 旅するイロ ブローチとイラスト(2013年)/装飾 大とんでん祭(2014年)/紙を使った蝶ネクタイやブローチのワークショップ(2014年)/紙を使った王冠や勲章のワークショップ(2015年)/個展 New Sea cafe(2017年)/個展 madobeno sima(2019年)/個展 Lovely Days(2022年) maniさんには10年ほど前の本誌(14号)に登場していただきました。2022年10月に開催された彼女の個展でその世界観を久しぶりに味わい、購入した作品を部屋に飾り眺めていると、再びお話を聞きたいという気持ちが沸々と生まれました。それは、今まで味わったことのない不思議な感覚でした。アートレポート vol.8615

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