SunClover45号
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1張子虎の箸枕 2雪男の箸枕 3ふたこぶラクダの箸枕本業がキャンドル作家の鶴子さんは活動17年目、さまざまなモチーフの箸置きを制作して4年目になります。箸置きを作るようになったきっかけは、民芸品や伝統工芸に深く興味があったことと、遺すことができるものを作りたくなったからだそうです。形あるものはいつか壊れることもありますが、彼女が特に遺したいのは、記憶や想い出だと話します。さまざまな生活シーンの中で、実家で使っていたもの、少しずつ買いそろえた食器、贈りものなどが隣にあって、楽しいことやうれしいことを想い出させる、そんな存在に憧れがあります。箸置きは、収集の趣味もあって、気に入ったものを並べていると、地元の家族や友人との食事の想い出が甦ります。彼女にとって、食卓の象徴でもあるのです。筆者は鶴子さんのカラスモチーフの作品を持っていますが、彼女の正体の他にも驚きがありました。ある時、彼女が店主にモチーフの相談をした際、「カラスが好き」と返事があったそうです。「箸を置くものとしてカラスはどうだろう?」と迷いますが、シルエットの格好よさ、色も店に合っていることから作ってみました。長い間売れなかったので店主はがっかりしていたのですが、作品が完成したときに店主が喜んでくれたことで彼女は満足していたそうです。するとある日、店主から完売の連絡が。買ったのは外国人のお客様、そして筆者だったのです。彼女はこのとき、自分の考えだけで決めずによかった、寄り添った結果よい方向にいくものだ……と思ったそうです。彼女の作品は、一般的な箸置きよりも自由で朗らかさがあります。気をつけているのは、こだわり過ぎず柔軟に考えること。作品を手にすると、それをより感じられると思います。今後の活動では、その場で箸置きを使ってもらえるような食のイベントへの参加や企画をしたいととても意欲的で、母の出身地・群馬の郷土料理も出したい、そうなると料理もがんばらなくては……と笑っていました。少し想像しただけでとても楽しそうなので、ぜひお邪魔したいです。記憶や想い出を遺す食卓の象徴をの23115文:菅原由香 写真:作家提供※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。みんげいはしまくらつるこ Reportろき通信Art プロフィール民芸箸枕 鶴子 (みんげいはしまくら つるこ)1977年生まれ、札幌市在住。素材にこだわりなく手仕事を得意として表現活動を続ける。民芸品を好み、食器収集も趣味であることで箸置きの制作を始めた。日々の食卓や特別な席……大家族でも1人暮らしでも、食は楽しくありたいと考える。Instagram@hashimakura_tsuruko民芸箸枕鶴子制作現場 「まるで覆面レスラーのよう」と気になっていた民芸箸枕鶴子さん。よくお邪魔していたお店に彼女の作品があったので、見るたびに興味が増していました。今回は急展開で、友人とのお茶会が、結果として取材になりました。本当に驚きました。なんと、その友人が鶴子さんだったのです!アートレポート vol.82

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