小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.28
~ろき通信 vol.66~

松浦 進(まつうら すすむ)の制作現場

 本誌vol.20の当コーナーに登場いただいた版画作家の松浦進さんが、1年間、海外での作家活動を経験し、札幌に帰ってきました。ずっと会いたかった彼に早速お話を聞かせていただきましたが、どんな心持ちで旅をしていたのか、私にははかりしれないことばかり。でもそんな彼の変化を、少しだけ垣間見ることができました。

海外経験で得た学びは、“自然に、のびのびと”

 言葉数の少ない松浦さんは、前回の取材のときもどこかつかみきれない佇まいでした。見え隠れするそんな雰囲気は、渡航先で制作したという作品の中にもありました。

 旅立つ前は、高校の美術教師という仕事と掛け持ちになってしまった制作に、「つくりたい!」というワクワク感が薄れ、「やらなければならない」といった気持ちばかりが強くなっていたそうです。

 そして海外へ。ロンドンでは、たくさんのギャラリーにポートフォリオを持っていく中、来る前の状況の“仕事に追われる日々”と重なってしまい、だんだんと嫌気がさしてきます。

 ベルリンでも同じくポートフォリオを持ち込みますが、年末だったこともあり、「1月以降に」と言われてしまいました。そこでは、4人部屋にベッドが4つあるのみのシンプルな部屋で、国籍の違う男性4人と過ごしていました。制作しようとしても、いつも使っていたような道具は手に入らず、スペースも広くはないので、スケッチブックにドローイングをしていました。

 ここで帰国後に見せてもらった「ねこなでる」シリーズがはじまります。何枚も描いた猫をなでる人の姿に、「久しぶりに自然に絵を描いた気がした」と話します。

 その後、2月にオランダで“癒し”をテーマに作品を発表し、帰国後も札幌で作品を発表しました。

 旅を終えての心境を、「本当はやりたかったけど、自分がやることではないと思っていたこともやってよいし、出してもよいに変わった」と語ります。そして、「のびのびやってます」と笑っていました。 旅の中で“癒し”を探り続けて形にした後、このテーマも作業的になってしまうのかもしれないけれど、のびのびと自由にまた新しい物をつくっていくのだろうな、と笑うその笑顔からは、たくましさを感じました。相変わらず、私のほうまでワクワクさせてくれます。次の作品も楽しみな作家の一人です。

写真:作家提供 
文:菅原由香 
※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

松浦 進(まつうら すすむ)/版画作家

1989年旭川市出身、札幌を拠点として制作。
http://susumumatsuura.tumblr.com
〈受賞〉(2016年)第10回秀桜基金留学賞、(2015年)第70回全道美術協会展八木賞、JR TOWER ART BOX AWARD 2015優秀賞、(2012年)三菱商事アートゲートプログラム2012年度奨学生選抜
〈個展〉(2017年)STRANGER-gellery PRÁM/プラハ, チェコ、Healing-AGALAB/アムステルダム, オランダ、(2016年)femail / mail-IKLECTIK/ロンドン, イギリス、artificial propagation planet -トーキョーワンダーサイト渋谷/東京、(2015年)artificial propagation city -JR札幌駅 ARTBOX/札幌、melancoria-gallery犬養/札幌、conscientia -TO_OV cafe gallery/札幌、persona-RED AND BLUE GALLERY/東京(2013年)、susumu matsuura exhibition-gallery-創/札幌(2012年)

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