小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.27
~ろき通信 vol.65~

Cadbunny(きゃどばにー)の制作現場

 「ここのあるものは、すべて誰かの手を経てここにある」。作品や商品などの“ もの” を目の前にするときは、心の中でこうつぶやきます。すると、当たり前だと思っていた鈍感な部分がふっと姿を消し、その“ もの” と素直に対峙できるのです。今回、Cadbunny さんに話を聞きたいと思った理由は、彼女の多岐にわたる活動が、そういった「ものを大切にする」ことにつながっているのだと確かめたかったからです。

感謝すること、大切にすること

 Cadbunny さん、改めていつものナホちゃんという呼び方をさせてもらいます。ナホちゃんの活動は大きく分けると、グラフィックデザイナー、刺繍作家、着物スタイリストの3つからなります。

 先日、ナホちゃんの着物スタイリストとしての活動の展示販売と、異なるジャンルの3人で行われた展示を見る機会がありました。デザインも着物も刺繍も接客も好きな彼女にとって、これらの活動を区別して説明するのは難しいことでしょう。しかし彼女を見ていると、どれも自然体で向き合っているように感じられます。どの作品にも共通するのは、鮮やかな色の組み合わせとバランスのよさです。個人的には、この活動の3本柱が、そのバランスを支えているのだと思っています。

 ナホちゃんの着物に対する「新品もいいけれど、素晴らしい技術で作られた、かつてあったもの(ビンテージ)を使ってあげたい」という言葉や、デザイナーとしての「ただ量産し、消耗するものではなく、手に取って身近に置いておきたくなるデザインがいい」という言葉。それらからは、普段の生活でも今あるもの、手にしているものに感謝する姿勢が伝わってきます。さまざまなものに感謝し、大切にすることを知っている人は、苦労や困難を乗り越えてきた人だと思います。ナホちゃんの人柄と、作品や活動における温かさの中には、自然とそれらが含まれているのです。

 彼女だけでなく、これまで紹介させていただいた作家の方々は誰しも、「どうやって生きるべきか」より、「どうやって生きたいのか」と、一度きりの人生を楽しむことを教えてくれます。そして、どうやって生きてもいいんだよ、と背中を押してもらえる気持ちになるのです。きっと作家に限らず、どの世界にもこう思わせてくれる人たちが、熱意を持って人生を楽しんでいます。そういった生き方や活動が、誰かの背中を押すことにつながっているのではないでしょうか。本誌読者の中にも、「知らないことを知ってみたい」と好奇心を持っておられる方がいるならば、文化・芸術に関わるものを観に行くことをおすすめします。自分では思いもしなかった感情や考え方に出会うことがあるからです。筆者も、何度もその出会いに救われたことがあります。

 ナホちゃんの今後の活動でも、「大切にする」姿勢がより一層垣間見られて、背中を押してくれる作品を発表してもらえるようで、うれしく思っています。

 今回は、自分の思いを少し話し過ぎてしまったことをお許しください。

写真:作家提供 
文:菅原由香 
※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

Cadbunny(きゃどばにー)/Naho Kuwahara グラフィックデザイナー・刺繍作家・着物スタイリスト

グラフィックデザインを基軸に新しくて古い・大胆な繊細さ・POP な憂いを細やかな線と鮮やかな色使いや、装いで表現するアーティスト。自己表現の一つとして描いた絵などの展示も定期的に開催している。刺繍ブランド【Cʼeedle】のデザイナー兼お針子。2015 年より着物のスタイリング・着付師として始動。2017 年3 月より着物サロン【客間】オープン。
AIR-Gʼ FM 北海道「Kayoʼs Radio ECCENTRIC CHIC」のラジオパーソナリティとして出演中。
公式サイトcadbunny.com

【公式サイト】 http://tsurumakigakudanhp.wixsite.com/tsurumakigakudan

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