小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.26
~ろき通信 vol.64~

弦巻 啓太(つるまき けいた)の制作現場

 脚本家、演出家であり、2003年に「弦巻楽団」を設立した弦巻さん。ウェルメイド・コメディを基調に、さまざまなジャンルの作品を上演しています。彼とは数年前から顔見知りでしたが、なかなか距離を縮めるタイミングをつかめないでいました。あと20年で60歳になるとき、「この仕事を一生やるんだ。本当に!」と気づいたという弦巻さんに、今回、念願叶ってようやくいろいろとお話を聞かせていただきました。

20年後には、今の自分が目指す演劇をしていたい

 弦巻さんが話を創作するようになったのは、小学生のころ、友人の家でやったゲーム『ドラゴンクエスト』がきっかけです。そこで「自分はこういう設定や話をつくる人になりたかったんだ!」と思います。それからいろいろと話を創作するようになり、自分の脳内で5年くらい連載が続いているものもあるのだとか。

 中学では、学祭の演劇の台本と監督を任されます。実際にやってみると、体が震えるほどの感動を覚えました。そこで高校では、演劇部に入ることを決めます。その中で、若いうちからこの世界で活躍している人も多くいることを知り、自分も目指すようになりました。

 幸いなことに、今までアイディアに困ったことはないという弦巻さん。しかし、新作を書くときには〝自分にとって必然性があるかどうか〟を考えます。取材をして、周到に準備をしても、果たしてそれに関わる資格が自分にあるのか。その承認が出るまでとても時間がかかると言います。「自分より壮絶な人生を経験している方はたくさんいて、それを自分が勝手に語ってはならないと思っています。それで周りに迷惑をかけることがあります」。

 劇団の授業やワークショップで使う台本は、シェークスピアなど、誰でも同じ距離感を感じられる作品を選択するように意識しています。自分の作品や、自分が若いときに影響を受けた作家の作品を使ってしまうと、自分の中にある答えを正解としてしまうからです。

 「おかげ様で仕事も増え、たくさんの方と出会う機会があります。自分はそんなに人が好きなほうではないと思っていたけれど、これだけ多くの方たちと関わってきたことを振り返ってみたら、好きじゃないとやっていないですね」と、今回お話しする中で気づいたそうです。

 自分が積み重ねてきたものに自己評価することはなく、毎日刹那的に生きてきたという弦巻さんは、演劇の道を選択した14歳のときも、他に好きなことができたらそっちへいくぐらいの気持ちでした。「でも20年やってきましたし、地獄もたくさん見ました(笑)。20年後には、もっと自分の在り方を言葉にできるようになって、今の自分が目指している、まだ名前もつけられていない演劇ができていれば、うれしいですね」と言います。

 弦巻さんが教えてくれたのは、シンガーソングライター早川義夫さんの言葉からくみ取った「変わろうと思って飛び出した個性なんて、個性じゃない。自分の魂に従って動いたときにズレが出ることを個性という」という考え方。弦巻さんも、そこを大切にして作品をつくっているのだと思いました。


K18パールカップリング(アコヤ本真珠6.5㎜)




写真:作家提供 
文:菅原由香 
※「ろき通信」は小野寺燃料が情報誌で10年以上継続しているアートレポートです。
北海道出身や札幌拠点で活動する現代アートの作家たちをご紹介しています。

弦巻啓太/脚本家、演出家、弦巻楽団代表

1976年札幌生まれ、1996年に仲間と『シアターユニット・ヒステリックエンド』を創設。2003年の退団後、「幅広い表現者とより上質な表現を」志し『弦巻楽団』を旗揚げ。2014年、第22回公演『ナイトスイミング』で日本演出者協会主催「若手演出家コンクール2014」で優秀賞、札幌劇場祭オーディエンス賞を受賞。2015年、「若手演出家コンクール最終選考会」において『四月になれば彼女は彼は』で最優秀演出家に選ばれる。2016年8月より発展的な活動、社会との接続を目指し劇団を一般社団法人化。一般社団法人劇団弦巻楽団とする。

【公式サイト】 http://tsurumakigakudanhp.wixsite.com/tsurumakigakudan

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