小野寺燃料

札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.27
~暮らしにまつわるエトセトラ 22~

シンデレラのガラスのスリッパ

 お家の中で、スリッパを履いていますか? 季節や部屋によって履き分けたり、来客用にちょっといいものを用意したり……。そんなスリッパは、私たちにとって馴染みの深い生活用品です。

 スリッパとは英語の〝slipper〟ですから、当然外国からやってきたものだと思われがちですが、実は日本生まれのもの。明治の文明開化により、日本には多くの外国人がやってきました。ところが彼らは、履物を履いたまま座敷にあがってしまうのです。そこで考えられたのが、靴の上から履ける外国人向けの履物でした。つくったのは徳野利三朗という仕立て職人。これがいまのスリッパの原型と言われています。

 それより少し前の江戸時代末期、オランダ商館の医師として来日したドイツ人シーボルトが、靴の汚れを防止するための履物を伝えました。福沢諭吉が著書『西洋衣食住』の中で「上沓=スリップルス」と紹介しており、スリッ パの語源となったという説もあります。

 日本は文明開化、そして戦後の高度成長期を経て、あらゆるものが西洋化してきました。居間からはちゃぶ台が消え、畳はフローリングとなり、ベッドで眠るようになりました。そんな中、「家の中では靴を脱ぐ」という文化は頑なに受け継いできています。なんとなくスリッパには、外国に迎合し過ぎないという日本人の文化と心を守ろうとする、ちょっとした意地を感じる気がします。

 ところで、英語の〝slipper〟は「滑らすように履けるもの」という意味で、上履きのこと。日本のスリッパとは異なり、普通の靴の形でも〝slipper〟といいます。シンデレラのガラスの靴も英語では〝glass slipper〟。ガラスのスリッパとは、なんだか変な感じですね。

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