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札幌の住まいと暮らしの情報誌「Sun Clover」vol.30
~ひととせコラム【30】~

明治維新150年

 今年(2018年)は、明治維新から数えて150年である。1868年4月に江戸城が開城され、7月に江戸が東京と改められた。8月に17歳になった天皇の即位の大礼が行われた。9月に慶應4年が明治元年に改元された。10月に天皇が京都から東京に遷られた。このように1868年(明治元年)には、わが国の歴史でも、もっともドラマチックな変化があった。これに因んでか、今年のNHKの大河ドラマも「西郷どん」が放送されている。ここ10年の大河ドラマの主人公は、天璋院篤姫、坂本竜馬、新島八重、吉田松陰の妹・文であり、いずれもこの時代の人々であった。今年は、明治以降の歴史を振り返るうえで、またとない機会である。
 250年以上にわたり鎖国を守り、「尊王攘夷」で凝り固まっていた人々が、一転して欧米列強に学び、その文明を進んで取り入れた。今年は、明治維新の歩みを次世代に残し、その精神に学ぼうという試みが国や多くの地方で行われている。政府の内閣官房には「明治維新150年関連施策推進室」が設けられた。記念事業として迎賓館赤坂離宮の特別公開がある。ここは元紀州藩邸があり、1909年(明治42年)に東宮御所がつくられ、その後迎賓館となった。明治以降の建物としては、初めて国宝に指定された。明治維新を推進した薩長土肥(鹿児島、山口、高知、佐賀)をはじめ、京都、大阪、長崎、横浜、会津若松など、維新に関連する各地でも、数多くの記念事業が行われている。

 北海道もまた明治維新150周年に関係がある。まず、1868年に榎本武揚ら旧幕府軍と官軍との函館戦争があったが、翌年旧幕府方が負け、戊辰戦争は終わっている。蝦夷地が北海道と命名されたのは1869(明治2年)8月15日である(太政官布告)。探検家の松浦武四郎(三重県松阪市出身)が、6つの名前を提案した。そのうちの一つである「北加伊道」を明治政府が採用し、字を変えて「北海道」にした。因みに「カイ」はアイヌ語の「この地で生まれたもの」という言葉に由来するという。松浦は、蝦夷地を探検しながらアイヌの人々を温かく見つめていた。北海道の開拓は、明治政府の一大プロジェクトであった。幕府崩壊で職を失った武士らを入植させ、西洋式農業を行うため外国人教師を雇い、農学校を開いた。開拓使は、札幌をはじめとして近代的な都市計画をつくり、大いに展開した。一方で、京都の東本願寺による道路の建設など、民間による協力もあった。
 道庁では、8月5日に札幌市豊平区の道立総合体育センターで、北海道命名150年記念式典を開くという。また7月14日から8月8日ごろまでを「北海道150年ウィーク」として、食、美術、音楽、歴史・文化、自然・スポーツ、科学、子どもなどをテーマとして記念事業を行い、先人に学び未来につなごうとしている。道庁のネオバロック風の建物、いわゆる赤レンガ旧庁舎(1888年建築)の保存事業も引き続き行われている。今年の夏の北海道は、雄大な景色や開拓の歴史が好きな人々で大いに賑わうことだろう。


イラストレーション:山本重也
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 国民的作家と言われた司馬遼太郎氏には、幕末や明治維新の時代を扱った小説や随想が数多い。もちろん北海道に関する作品もある。『坂の上の雲』『竜馬がゆく』『胡蝶の夢』『翔ぶが如く』『花神』『世に棲む日日』『峠』などはいずれも幕末や明治維新の時代や人々を扱っている。北海道に因む作品としては、代表作とされる『菜の花の沖』があり、函館の商人・高田屋嘉兵衛が主人公である。『街道をゆく』シリーズには、『北海道の諸道』『オホーツク街道』がある。随想には大部の『「明治」という国家』(平成元年刊)がある。現代の人々の明治維新のイメージは〝司馬史観〟によって形成されているとさえ言われている。明治維新後150年の「坂の上」には、「雲」をはじめ多くの出来事や人々の思いがあった。過去があればこそ現在がある。「降る雪や明治は遠くなりにけり」という中村草田男の有名な句があったが、私は「雲の峰明治のはじめを想ひたり」との駄句を詠んでみようか。

大森清司(おおもりきよし)

1937年8月千葉県野田市生まれ。1960年中央大学法学部卒業。1960年野田醤油株式会社(現キッコーマン)入社。営業企画部長、デルモンテ事業部長などを経て、1994年取締役就任。2002年代表取締役専務として全国の営業を統括。2010年退職。この間、日本マーケティング協会マスターコースマイスター、全国トマト加工品業公正取引協議会委員長、学校法人中央大学理事などを歴任。著書に『私のビジネス春秋』『春秋余情 私のほどほど人生』『春秋高く、しなやかに シルバー・ボーイズ、ビー・アンビシャス!』(諏訪書房)。趣味は読書、詩吟。

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