釜石のサンマ

 友人の結婚式に呼ばれて、泊りがけで岩手県釜石市へ出向いたのは、今から 30年も前のこと。

 ビジネスホテルに泊まり、翌朝は早起きして港へ出かけた。セリをしている魚市場だったのだと思う。朝の散歩気分で、ひとりで魚市場に入っていった私に、「お姉ちゃん、旅の人? これあげるからあっちの食堂で焼いてもらいな」と声がかかり、サンマを1匹差し出された。袋にも入ってない、もちろん生の魚。びっくりしたけど、手を出して尻尾を指で掴み、「ありがとうございます」と言いながら、落とさないように教えてもらった食堂へ行った。

 サンマを焼いてもらって、味噌汁とご飯をよそってもらい、ホテルで待つ友人のことは忘れて、食べた。

 あれからずっとサンマが大好き。骨だけ残してきれいに食べられる。

 東北大震災の三ヶ月後、釜石を訪ねると、思い出の地は見当たらなかった。いずれ再訪して、現地でサンマを食べてみたい。

小出 広子

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